売却時に知っておきたい契約書の必須項目
不動産売却における契約書は、売主・買主双方にとって法的な拘束力を持つ極めて重要な書類でございます。一見すると複雑で難解に思えるかもしれませんが、基本的な構成と必須項目を理解しておくことでトラブルを未然に防ぐことが可能です。本記事では、不動産売却時に押さえておくべき契約書の主要項目について、わかりやすく解説いたします。
1. 売買の当事者と物件情報
契約書の冒頭には、売主・買主それぞれの氏名・住所・連絡先が明記されております。また、対象となる物件の情報についても詳細に記載されます。
記載される内容例
- 登記上の所在地・地番
- 土地の地目・面積、建物の構造・面積
- 登記簿上の所有者との一致確認
売却対象とされている物件に誤りがないか、登記情報と照らし合わせて確認しておきましょう。
2. 売買金額と支払条件
もっとも注目されるのが、売却価格と支払い方法に関する項目です。
確認すべきポイント
- 売買代金の総額(税込・税別の確認)
- 手付金の金額と支払日
- 残金の支払期日と方法(振込・現金など)
手付金は契約解除権にも関係するため、「手付解除」のルールについても十分に理解しておく必要がございます。
3. 引渡しの時期と条件
物件の引渡しに関する記載も、トラブル回避の観点から非常に重要でございます。
引渡し関連の記載事項
- 引渡し予定日(通常は残金決済日)
- 引渡し時点の状態(空家か居住中か)
- 設備・備品の有無(エアコン、照明などの残置)
設備リストや付帯設備表は別紙として添付されることが一般的です。
4. 瑕疵担保責任(契約不適合責任)
2020年の民法改正により「契約不適合責任」という言葉が使われるようになりました。
確認しておくべき内容
- 売却後に発見された不具合に対する責任の範囲
- 責任の期間(一般的には引渡しから3ヶ月程度)
- 売主が「個人」か「宅建業者」かによる違い
特約で「現状有姿による引渡し(瑕疵免責)」とする場合もございますが、その旨の記載があるか必ず確認いたしましょう。
5. 契約解除・違約金の規定
万一どちらかが契約を解除した場合、違約金の支払い義務が生じることがあります。
主な解除条項
- 買主が手付金を放棄することで解除(手付解除)
- 売主が手付金の倍返しで解除
- 債務不履行による解除と損害賠償の規定
解除時の負担がどちらにあるかは、契約書の記載次第です。慎重な確認が求められます。
6. その他の特約事項
契約書には、個別事情に応じた「特約事項」が記載される場合がございます。
特約の例
- 売主が引渡し後も一定期間居住を続ける
- 引渡し前の修繕義務について
- 境界未確定の場合の処理
特約は双方の合意があってこそ有効であり、後々のトラブル防止に役立ちます。
まとめ
不動産売却時の契約書には、金銭面・引渡し条件・責任の所在など、極めて重要な情報が含まれております。一度サインすれば法的拘束力を持つため、必ず一項目ずつ内容を把握してから署名することが大切です。不明点があれば遠慮なく仲介業者や専門家に確認をとり、安心して売却手続きを進めまいりましょう。