不動産売却における権利書の紛失リスクと対策
不動産を売却する際に必須となる書類のひとつが「権利書(登記済証または登記識別情報)」でございます。この書類は、売却時に本人確認や所有権移転登記の際に必要とされる重要なものです。しかし、「どこに保管したかわからない」「うっかり紛失してしまった」というケースも少なくありません。本記事では、権利書を紛失した際のリスクや対策、万が一紛失した場合の対応について詳しく解説いたします。
1. 権利書の役割とは
権利書は、不動産の所有者であることを証明する書類です。
種類
- 登記済証:2005年以前に発行された権利書
- 登記識別情報通知:2005年の法改正以降に発行された12桁の英数字コード
この書類があることで、所有権移転登記などの際に本人確認がスムーズに進むのです。
2. 紛失した場合のリスク
権利書を紛失すると、売却手続きがストップするわけではありませんが、手続きが煩雑かつ時間がかかることになります。
主なリスク
- 登記申請時に「本人確認情報」や「事前通知制度」など追加手続きが必要
- 手続きのために司法書士報酬などのコストが増加
- 取引全体のスケジュールが遅れる
売却予定がある場合は、早めに所在を確認しておくことが大切です。
3. 紛失時の対応方法
権利書を紛失した場合、次の方法で登記手続きを進めることが可能です。
① 本人確認情報制度
司法書士が本人確認書類と面談をもとに作成する「本人確認情報」を法務局に提出して登記申請を行います。
必要書類
- 顔写真付き本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 固定資産税納税通知書など補完資料
② 事前通知制度
登記申請後、法務局から所有者宛に「事前通知」が郵送され、到着後2週間以内に署名・捺印して返送する方法です。
デメリットとして、郵送の遅延リスクや不備時の再手続きが発生しやすい点が挙げられます。
③ 公証人による本人確認
公証役場で「本人確認証明書」を作成してもらい、登記申請時に提出する方法です。こちらは即日性が高いですが、費用は数万円程度かかります。
4. 紛失を防ぐための保管方法
権利書は、再発行ができない書類であるため、厳重な管理が必要です。
おすすめの保管場所
- 貸金庫(最も安全)
- 耐火・耐水の金庫
- 家族が知っている決まった場所
電子データではなく、紙の原本でしか効力がない点に注意が必要でございます。
5. 実務上のアドバイス
売却を予定している場合は、売却活動を始める前に権利書の有無を必ず確認しておくことが肝要です。紛失が判明した場合は、すぐに司法書士に相談し、手続きを前倒しして進めることが、トラブル防止のカギとなります。
まとめ
不動産売却において権利書は、所有権移転をスムーズに進めるための重要書類です。紛失しても売却は可能ですが、追加手続きやコスト、スケジュールの遅延といったリスクが伴います。安心・迅速な売却のために、権利書の所在確認と厳重な管理、そして万が一の際の迅速な対応を心がけましょう。
まとめたページもご用意しています。ぜひご覧ください。
「知らなかった」では済まされない法的リスク